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2011年12月 アーカイブ

燕尾服

男の場合の夜の礼装としては最上位にあるのが燕尾服です。


これを着てあらわれるから、はじあての人は異様な顔をして、しまいには心配そうな顔をする。


こんな第一礼装を着ているくらいだから、さぞかしこの店は高いだろうな、と心配になるのだ。


しかしいくら高い店でも日本の高い店とはちがう。


なにしろ日本という国には、コーヒーがですよ、あのコーヒーが、一杯なんと九千九百円という店もあるのですから、事実。


外国では安心していられる。


たかがコーヒー一杯、という気安い値段がついているということで、まちがってもコーヒーに"様"がつくようなもったいない値段はついていない。


この店でも、他の店とくらべてせいぜい二倍と見とけばいい。


海外旅行をしたら安心してコーヒーを注文してみよう。


しばらくして、くだんの燕尾服氏が、コーヒーを片手にして目の前に立つ。


白と黒と、鮮やかなオレンジ色を縞模様に仕上げたコーヒーカップです。


これはジノリという、イタリアでは超高級品の部類に入る、焼き物のメーカーの品です。


日本でいえば、さしずめノリタケチャイナというところか。


このコーヒーカップをおくとき、小さな紙片もいっしょにかたわらにおく。


これがコーヒーの計算書です。


こういう場合、すぐその場で、持ってきたのと同時に払うのと、コーヒーを飲んでしまっていざ立ち上がるというときになって、あらためて払うのと、その払い方は二とおりある。


昔はヨーロッパじゅうが、後者の払い方でした。


しかし近ごろはウエイターの数も、絶対数ぎりぎりの場合が多いし、ちょっと客が多いと手が回らないから、コーヒーを運ぶのと、金を受けとる手間が二度になるので、ウエイターもそれらしい顔つきをして、客を促すことが多くなった。


それとうっかりすると、あっという間に客が消えてしまうこともあるとか。


これはウエイター側のいいぶん。


そして客のほうから言わせれば、いざ立ち上がろうとしてまわりを見渡しても、かんじんのウエイターは来ないし、どうすりゃいいんだこの俺は、ということも多いので両者の便宜上、いまではいわば引きかえに金を払うことが多くなった。


さて、ゆっくりこの紙を見てみよう。


上がコーヒーの値段、いまなら三千ユーロか五千ユーロくらいはするだろうか、ここのコーヒーは。

日本の並みの喫茶店ぐらい

日本の金にして、今イタリアとの換算が十分の一だとすれば、三百円から五百円くらいか。


イタリアでは高いとしても、日本の並みの喫茶店ぐらいか。


そしてその数字のすぐ下がサービス料、普通は15パーセントです。


その下にトータルが出ています。


そのトータルの数字だけ払えばいい。


その場合にも、この紙切れはじっくり見たほうがいいし、もしサービス料らしきものが入ってない場合には、「コンセルヴィーツィオ?」と聞いてみるといい。


入っている場合には、低い声で、「シイ」と言うだけ。


もし入ってない場合には、大きい声で、「ノンシニョーレ、ノンセルヴィーツィオ、ノン」とノンをやたらに言うから、イタリア語はさっぱり、という人にもすごくはっきりとわかる。


そんなこんなで海外に行くならやっぱりイタリアだなーと日々思うわけです。


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